役員からの借入による資金調達

役員からの借入による資金調達

役員が法人に貸すお金のことを役員借入金と呼び、法人が柔軟に資金調達できる方法として、特に設立が間もない企業で利用されることが多いです。この役員借入金の仕組みを知っておくことで、いざというときに法人が資金調達する方法として活用できるでしょう。

 

本記事では、役員借入金の概要をお伝えすると共に、ファクタリングとの違いなど解説していきます。

 

役員借入金の特徴

役員借入金とは、会社の資金繰りに困ったときなど、役員が資金を法人に建て替えて入金することを指します。

 

利息や返済期間を自由に設定できる

借入金なので、期間や利息を定める必要がありますが、いずれも法律の範囲内であれば自由に設定することが可能です。

特に設立間もないときに利用する役員借入金については、資金の目処がつくまでの間、個人のお金を法人に入金するといった側面が強いでしょうから、返済しやすい内容で取り決めするのが一般的でしょう。役員借入金は、将来法人の業績が回復して返済できるようになったときに、法人から役員に対して返済がなされることになります。

 

無利息で貸し付けると税務上「利益」として扱われる可能性がある

役員借入金は法人と役員との間で自由に金利と返済期間を設定できることから、金融機関からの借入よりも低コストで利用できるというメリットがあります。

 

設立間もない法人の持主が、自分の資産を法人に入金するというケースでは、利息を受け取る必要もないと考えることも多いでしょう。しかし、役員借入金に対して利息を付さない形にすると、本来であれば支払わなければならなかった利息が支払わなくてもよくなったとして、その分が税務上利益として扱われる可能性がある点に注意が必要です。

 

役員借入金とファクタリングの違い

法人が選択できる資金調達法として、役員借入金とファクタリングにはどのような違いがあるのでしょうか。

 

売掛金は法人にとって、将来受け取ることができる債権ですが、売上発生から入金まで1カ月以上の期間が空くことも多く、特に中小企業にとってはこれが大きなダメージとなることも多いです。こうした中小企業にとっては、ファクタリングが重要な資金調達の一つとなっているといえるでしょう。

 

ファクタリングはリスクヘッジの手段ともなりうる

売掛金は取引先から将来お金を受け取ることができる債権ですが、万が一のケースではありますが入金されないというケースもあります。

 

具体的には、売上発生から売掛金の入金日までの間に売掛先の企業が倒産してしまったケースです。この場合、売掛元の法人は商品やサービスを納品したのにも関わらずお金を回収できないことになり、大きなダメージを負ってしまうこともあるでしょう。その額によっては、連鎖倒産してしまうこともあります。

 

一方、ファクタリングを利用するときは、ファクタリング会社によって売掛先の企業の審査がなされ、いざ売掛金の回収が不能になってしまった場合、償還請求なしの契約をしていたケースでは、ファクタリング会社が負債をカバーしてくれることになります。これにより、売掛金の回収についてファクタリングを利用することが将来回収不能になるリスクをヘッジできるということになります。

 

ファクタリングは手数料を支払う必要がある

ファクタリングを利用するには、回収不能になるリスクの高さに応じて手数料を支払う必要があります。

 

一方、役員借入金については、役員に対して利息を支払う必要があります。役員借入金の場合、そこまで高い金利設定はしないことが多いでしょうが、借入している間ずっと利息が生じることになるため、借入期間が長くなるほど、負担が大きくなる点に注意が必要です。短期間であれば役員借入金の方が低コストで利用できますが、期間が長くなると結果的にファクタリングの方がコストは低くなることもあるでしょう。

 

役員借入金は自己資本比率が低下してしまう

役員借入金を利用する注意点として、役員借入金は「他人資本」に分類されることから、全体の資本に対する自己資本の割合を表す「自己資本比率」の低下につながってしまうということが挙げられます。自己資本比率は会社の信用度合いを示す1つの指標なので、役員借入金を多用すると会計上、会社の信用が低下していってしまうことになります。

 

一方、ファクタリングは単に売掛債権を現金化するだけのことなので、上記のようなことや信用情報に登録されるといった心配もありません。ただし、ファクタリングのうち、3者間ファクタリングを利用すると、売掛先企業に資金繰りが危ないのではないかと思われてしまうリスクには注意が必要です。このリスクを懸念するのであれば、2者間ファクタリングを利用するようにしましょう。

 

まとめ

法人の資金調達法の一つである役員借入金についてその特徴やファクタリングとの違いについてお伝えしました。

 

役員借入金はファクタリングのように手数料がかからないため、コスト面では役員借入金の方がよいことも多いでしょう。ただし、本記事でお伝えしている通り、長期での借入の場合は利息がかさむことや、自己資本比率の悪化につながるという点には注意が必要です。