ファクタリングの法的根拠とは?
売掛債権を売却して現金化するファクタリングですが、どのような法律を根拠にしているのでしょうか。本記事では、ファクタリング契約について法的根拠と法律の内容を解説していきたいと思います。
ファクタリング契約に関連する法律
ここでは、ファクタリング契約について2者間ファクタリングと3者間ファクタリングに分けて法的根拠を解説します。
2者間ファクタリングの法的根拠
2者間ファクタリングは売掛債権を売却し、その対価として金銭を得る契約のため、売買契約に該当します。
なお、売買契約は民法第555条に記載されています。
民法555条
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
3者間ファクタリングの法的根拠
3者間ファクタリングの場合は基本的にファクタリング利用会社からファクタリング会社に債権譲渡されることになります。債権譲渡は当事者間の意思の合致のみで成立し、売掛先の承諾を要しませんが、債務者や第三者に権利の主張を行うためには対抗要件を備える必要があります。
債権譲渡の対抗要件は以下のようなものです。
・譲渡人(ファクタリング利用会社)から債務者(売掛先)への通知
・債務者(売掛先)の承諾
・債権譲渡登記の具備
対抗要件を備えておかないと、後日法的トラブルに発展する可能性が高いため、原則として全ての取引で対抗要件を備えるように進めることになります。
なお、上記については民法第466条と第467条に記載があります。
民法第466条
1.債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
民法第467条
1.指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2.前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
ABLの法的根拠
ファクタリングは売掛債権を売却する取引ですが、ABL契約は売掛債権を担保に融資を受けるというものです。このABL契約の消費貸借契約と呼ばれるもので、一方が受け取ったものに対して、それと同種のもので返還することを約束します。
ABL契約で融資を受ける側は、売掛債権を担保に融資を受けた後、借入金に利息をつけて返済することになります。ABL契約は融資のため、貸金業者の登録を受けていないファクタリング会社は同契約には対応できません。
消費貸借契約については民法第587条に記載があります。
民法第587条
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
ファクタリングの法的観点から見た注意点
ファクタリングやABL契約の法的根拠について解説しましたが、ここではファクタリングに関する法的観点から見た注意点をご紹介します。
2者間ファクタリングが売買契約に該当することは重要なポイント
先述の通り、2者間ファクタリングは売買契約に該当します。
人によっては、お金のやり取りをするため貸金業の許可が必要なのではないかと感じるかもしれません。
仮に、2者間ファクタリングが一般的な融資の際に結ぶ金銭消費貸借契約だった場合、不特定多数の相手と反復継続して契約する場合には貸金業の許可が必要になります。つまり、上記ケースではファクタリング会社が貸金業の許可を得ていなければ、違法な取引です。
しかし、一般的な2者間ファクタリングは売買契約として扱えるため、貸金業の許可を得る必要はなく適法に取引できます。
2者間ファクタリングで金銭消費貸借契約と判断される可能性のある取引とは?
取引の内容によっては2者間ファクタリングでも金銭消費貸借契約とみなされる場合があります。
例えば、通常の2者間ファクタリング契約であれば、債権額と買取額に差異はありません。
債権額100万円の売掛債権を買取する場合、買取額100万円で買い取って手数料10万円を差し引いた90万円が支払われるといったものです。
一方、債権額100万円に対して50万円支払われるといったケースで、債権額と支払われる額に大きな差がある場合には金銭消費貸借と判断される可能性があります。
この場合、先述の通り違法な取引となる可能性があるため注意が必要です。
まとめ
ファクタリングに関する法的根拠についてお伝えしました。
多くのファクタリング会社は法律に則って営業していますが、中には闇金まがいの営業を行っている会社もあるため、本記事でご紹介した法的根拠をしっかりと押さえたうえで契約を進めることが大切だといえるでしょう。
特にファクタリングを利用しようとするときは、少しでも早くお金を手にしたいと考えるケースも多いかと思います。ですが、契約時に少しでも不安に思うことがあれば、一度立ち止まって契約の内容をしっかり確認し、場合によっては中止するといった判断もできるようにしておくとよいでしょう。