募集株式の発行とは？ファクタリングの違いと合わせて解説
株式会社であれば、資金調達の一つの方法として募集株式の発行という手法を取ることもできます。
本記事では、募集株式の発行についてその仕組みや特徴、メリット・デメリットをお伝えすると共に、ファクタリングとの違いについても解説していきたいと思います。
募集株式の発行とは
募集株式の発行とは、株式会社が株式を発行することで金銭や物を受け取るという資金調達法で増資とも呼ばれます。
株式を発行することにより、株式会社は資金を調達できる一方、株式を購入した株主は経営に参加できるようになったり、配当金を受け取れるようになったりといったメリットがあります。
募集株式の発行によるメリット
募集株式の発行によるメリットは、株式発行には返済義務がないということが挙げられます。同じく資金調達する方法として金融機関からの融資が借入金という形で返済義務があるのはもちろん、募集株式の発行と似た手法であり社債の発行も返済義務があるのと比べると、この点は大きなメリットだといえるでしょう。
募集株式の発行により、借入金によらない方法で資本を強化できるため、会計上で財務基盤を強化できるのです。財政基盤を強化することができれば、その後、金融機関から融資を受けるにあたっても、審査でよい印象を与えやすくなるでしょう。また、そもそも増資をすることで引き受けてくれる投資家が多数いるということはそれだけ企業の信用が高いことの証明にもなります。
募集株式の発行によるデメリット
募集株式の発行にはデメリットもあります。
具体的には、増資をすることにより、既存株主の持分が減ることにつながり、オーナー経営者の場合には経営の自由度が下がってしまうことになります。ただし、この点については議決権のない株式による増資を行うといった方法により問題を回避できます。
また、株主に対しては、事業を通して得た利益の中から配当を支払う必要があり、増資をすることでより多くの配当金を支払わなければならなくなる可能性がある点もデメリットだといえるでしょう。その他、増資をすることにより資本金が増え、一定額を超えると納税額が変わるといった点にも注意が必要です。
募集株式の発行とファクタリングの違い
募集株式の発行と同じく、企業の資金調達法の一つであるファクタリングについて、両者の違いを見てみましょう。
資金化までのスピードの違い
募集株式の発行とファクタリングとの違いの中で大きなものに、資金化までのスピードの違いが挙げられるでしょう。ファクタリングは売掛債権を売却する取引であり、即日で売掛債権を現金化できることもあります。
一方、募集株式の発行は株主総会の決議や引受人の募集など多くの段階を踏む必要があり、最短でも1カ月以上はかかると考える必要があるでしょう。
特に、ファクタリングは売掛債権の期日まで待てないほど現金が不足しているケースが多く、資金化までのスピードの違いは大きなポイントとなります。
登記の違い
また、募集株式の発行は、発行済株式数や資本金の額が、法人の登記事項となっているため、増資によりこれを変更することで、登記手続きが必要になります。
一方のファクタリングにはもちろん、売掛債権等は登記事項となっておらず、ファクタリングを実施することで変更登記をしなければならないといったことはありません。なお、募集株式の発行とは性質が異なりますが、ファクタリングでは債権譲渡登記をすることがあり、この場合には別途登記を行う必要があります。
手数料の違い
ファクタリングは期日より前に売掛債権を現金化する取引であり、ファクタリング会社は、売掛債権が支払われないといったリスクを負う必要があることもあり、その分手数料を支払う必要があります。
なお、原則としてファクタリング会社側のリスクが高ければ高いほど手数料率は高くなります。例えば2者間ファクタリングでは、ファクタリング会社は売掛先企業を直接審査できないことからリスクが高く、手数料率の相場も10～30%と高くなるのです。
一方、3者間ファクタリングでは、直接売掛先企業を審査できることもあり、手数料率の相場は5～20%と3者間ファクタリングより低くなっています。その他、債権譲渡登記の有無や償還請求権の有無など、いずれにおいてもファクタリング会社の未回収リスクが高くなるほど手数料も高くなると考えるとよいでしょう。
募集株式の発行には手数料がかからず、この点においては、ファクタリングにデメリットがあるといえるでしょう。
まとめ
募集株式の発行についてその特徴やメリット・デメリットをお伝えするとともに、ファクタリングとの違いについて解説しました。
募集株式の発行とファクタリングはそれぞれメリット・デメリットがあり、得意とするシーンも異なるといえるでしょう。資金調達手段としてどちらが優れているとは必ずしもいえず、経営者としては、双方の方法についてその仕組みや内容をよく理解しておくことが大切だといえます。