ファクタリングの歴史。発祥から日本で普及するまで

ファクタリングの歴史。発祥から日本で普及するまで

売掛債権や請求書を現金化するファクタリングは、いつからはじまったのでしょうか。起源をたどってみるとその歴史は古く、長く愛用されてきた商取引であることがわかります。今回は、ファクタリングの歴史を紐解き、このサービスが定着した背景と意義について考えてみます。

ファクタリングの発祥は14世紀のヨーロッパ

ファクタリングがいつ、どこではじまったのかについては諸説あります。古代メソポタミアの穀物取引にその原型がみられるという説もあるほどで、まだ貨幣経済が誕生する前から一部の地域で用いられてきたようです。

 

記録がはっきりと残る範囲で考えた場合、その発祥は14世紀のヨーロッパに求めることができます。衣料品の交易が活発だったイギリスで生まれ、植民地支配や産業革命で経済のグローバル化が進む中で発展したという説が有力です。

 

1300~1400年代に登場した「ファクター」

1300年代に衣料品交易のための資金調達方法のひとつとして、売掛債権の譲渡が取り入れられるようになります。債権を買い取る組織は「ファクター」と呼ばれました。衣料品の売買でお金を稼ぐ商人を対象に、現金の前貸しを行っていたのです。

 

また、旺盛にビジネス活動を展開していたユダヤ商人たちも、この前貸しサービスに目を付けます。彼らは輸出業者から請求書を買い取り、利息を付けて現金を提供していました。請求書を買い取り、現金化するサービスはファクタリングの仕組みそのものといってよいでしょう。

 

植民地支配を加速させた前貸し制度

16世紀以降、ヨーロッパの経済圏は海を越えて新大陸にも及ぶようになります。西洋列強の草刈り場となったアメリカ大陸では植民地が続々と築かれていき、母国相手に貿易をはじめるイギリス商人やフランス商人の入植も進みました。

 

商人たちはアメリカで栽培されたタバコや綿などの原材料をイギリスへ輸出する際、請求書を基に前借りを求めました。これが起爆剤となってイギリスへの輸出量は爆発的に伸びたといいます。請求書ファクタリングは植民地化を加速する一因にもなったのです。

19世紀末アメリカで現代ファクタリングの形が完成

19世紀、イギリスからアメリカへの毛織物輸出が大幅に増加しました。この交易においてもファクタリングが活用されます。ここでは請求書ではなく、売掛債権を基に資金の前借りが行われたといいます。売掛債権の売却による早期現金化のはじまりです。

 

ファクタリング利用は産業革命を経て活発となり、近代的な決済システムとして発展を遂げていきます。

 

資金調達だけでなく信用調査も

今、私たちが目にしているファクタリングは、早期の資金調達と信用力の調査が主な眼目ですが、その原型は19世紀末から20世紀初頭のアメリカで誕生したといわれます。

 

当時、アメリカ国内の繊維産業は冷え切っていました。世界中に買い手がいても運転資金が足りないばかりに生産が追い付かず、工場の倒産が相次ぎました。とにかく資金を投入して生産量を増やす試みが導入され、その潤滑油としてファクタリングが積極的に活用されたのです。

 

このときからファクターは資金提供だけでなく、信用力の調査も請け負う会社へと進化を遂げます。現在のファクタリング会社の体裁が整ったのです。

 

繊維産業が息を吹き返したことによりアメリカの景気は急回復しました。ファクタリングがその一因となったのは間違いありません。

日本で運用がはじまったのは1970年から

世界的にみるとファクタリングの歴史は長いものの、日本国内に目を向けると認知も普及も遅かったといえます。日本で長年の慣行となった「手形取引」の存在が大きく、平成に入ってようやくその存在に注目が集まるようになります。

 

日本の商取引で主流だった手形決済

日本で売掛債権の現金化といえば、銀行から前借りする手形取引です。1970年初頭にアメリカからファクタリングによる現金化手法が伝わるも、一部の債権回収会社が取り入れるのみで一般化するほどの広まりは見せませんでした。

 

日本で普及しなかった原因として、手形決済サービスを提供する大手銀行や都市銀行などが金融の中心だったこと、ファクタリングの仕組みがわかりにくかったこと、売掛債権の売却そのものが良い印象をもたれない日本のビジネス文化などが挙げられます。

 

平成大不況の真っただ中に普及

1991年に地価と株価が大幅下落する資産バブル崩壊が起きて、日本は未曾有の大不況に突入しました。大量の不良債権を抱えた銀行経営は失速をはじめ、それと平行して手形決済も衰退しました。

 

手形取引に代わる新たな決済手段として、ファクタリングに注目が集まるようになります。みずほ銀行や三菱UFJ銀行などのメガバンクが一括ファクタリングを導入したことで認知が広がりました。

これまでファクタリング普及の阻害だった債権譲渡を保護する仕組みや複雑な手続きなども法改正によって緩められ、サービス環境が大幅に改善されていきます。

民間ファクタリング会社の参入も相次いだことで、譲渡できる売掛債権額の幅も広がり、中小企業の資金繰り改善にも貢献できるサービスとして定着しはじめています。