ファクタリングと取引信用保険の違いについて

ファクタリングと取引信用保険の違いについて

ファクタリングとよく比較されるサービスに「取引信用保険」があります。その名の通り保険サービスの一種で、売掛債権の貸し倒れリスクをカバーするというものです。ファクタリングとはどのような違いがあるのでしょうか。また、どちらのサービスを選ぶほうが問題の解決に役立つでしょうか。今回は、ファクタリングと取引信用保険の違いについてご説明します。

取引信用保険とは?

取引信用保険とは、信用リスクのある取引先の倒産や不払いへの備えとして利用するサービスです。

利用者は保険サービスに加入後、毎月保険料を納めます。売掛金を回収できなくなった場合、損害金の全額または一部が支払われる仕組みです。

あくまで保険であり、現金化を目的に利用するサービスではありません。

未回収となった場合のみ保険金が下りる債権保証を目的とするサービスで、主に保証が低い小口取引を多く抱える企業などに活用されています。

【比較】ファクタリングと取引信用保険

ファクタリングと取引信用保険の違いとは何でしょうか。4つのポイントに分けてご説明します。

 

■売掛先の範囲

ファクタリング:特定の取引先を自由に指定できる

取引信用保険:原則すべての取引先が対象

 

■未回収リスク

ファクタリング:未回収の場合、ファクタリング会社が引き受ける

取引信用保険:保険金が下りない場合もある

 

■保険料・手数料

ファクタリング:売掛債権の10〜30%

取引信用保険:支払い限度額の3%

 

■対象業種

ファクタリング:業種問わず対象

取引信用保険:対象外となる業種が多い

売掛先の範囲

取引信用保険の保険対象は「包括設定」となります。原則、すべての取引先が対象です。保険によっては、売上高や債権残高で条件を設定する場合もあります。

一方、ファクタリングは特定の1社に限定して売掛債権を譲渡することが可能です。包括設定が原則の取引信用保険に対し、ファクタリングは個別設定の枠組みで債権を扱うサービスといえます。

 

未回収リスク

未回収リスクに備えて入るはずの取引信用保険ですが、肝心の保険金が下りないケースもあります。保険会社は保険事故が起きた際、事細かく取引先の状況を調べ、補償の可否を決定します。調査の結果、補償に妥当性がないと判断された場合、保険金が下りない可能性があります。

ファクタリングの場合、回収ができなくても損失はファクタリング会社が負います。未回収リスクを恐れることなく、売掛債権を売却できるのです。

 

保険料・手数料

取引信用保険の保険料相場は、取引先の支払い限度額の3%前後です。

たとえば、以下の掛け取引の状態で保険に入るとします。

  • 取引者数:12社
  • 支払い限度額:500万円
  • 保険料:限度額の3%

「12×500×3%=180」年間180万円の保険料となります。

 

ファクタリングの手数料は一般的に売掛債権の10~30%程度です。取引先を交えない2者間ファクタリングと、取引先を交える3者間ファクタリングでは手数料に違いがみられます。後者の場合、10%未満とする会社も少なくありません。

 

対象業種

取引信用保険の加入条件は厳しく、多くの業種が対象外となっています。具体的には、小売業やサービス業、不動産業、広告業、農林漁業などです。

これに対しファクタリングの利用条件は緩やかで、対象外と指定している業種も特にありません。規模も大企業から中小零細、ベンチャー、個人事業主まで幅広く活用されています。

取引信用保険の注意点

取引信用保険に加入する場合、以下の点に注意してください。

 

保険料が高い

取引信用保険の保険料相場は支払い限度額の3%と説明しました。しかし、取引先すべてを保証対象に含める必要があるため、年間の総保険料は高額となりがちです。しかも、1度契約を結ぶと毎年納めることになります。コストに見合うだけの利用価値があるかの検証・分析が大切です。

保険金額が支払い限度額を下回ることも

支払われる保険金額は、縮小率を用いて計算されます。縮小率はおよそ90~95%で、これに損害額を乗じた額が保険金額となります。

 

ただし、取引信用保険には支払い限度額があらかじめ設定されています。実際に支払われる保険金額は、損害金と縮小率を乗じた金額と支払い限度額を比較して、低いほうの金額となる点に注意してください。

 

たとえば損害金が300万円だった場合、「300万円×縮小率90%=270万円」となり、支払われるのは270万円です。500万円はあくまで限度額で、実際には損害金の9割程度の保証と思ってください。

未回収リスク対策として「保証ファクタリング」もある

ファクタリングには、取引先の倒産で売掛金を回収できなかった場合に備える「保証ファクタリング」があります。取引信用保険と比べて審査のハードルが低く、中小零細企業でも利用しやすいサービスです。特定業者を個別かつ限定的に設定することも可能で、全取引先を指定する取引信用保険の保険料よりは低負担となります。

 

取引信用保険は対象業種が限られており、審査も厳格です。保険加入が難しい場合は保証ファクタリングの利用をおすすめします。低いコストでピンポイントの債権保証が可能です。

まとめ

ファクタリングは資金調達や未回収リスクに対応できるサービスです。取引信用保険に加入せずともファクタリングで対応できるケースは少なくありません。どちらを選ぶにしても、特徴や問題点を理解して信頼できる業者への依頼を心がけてください。